ソ連の別荘
小学生の頃、ソビエト大使館が発行していた「今日のソ連邦」という広報誌を読んだ。今となってははっきりとは覚えていないが、航空宇宙技術に関する何らかの記事が読みたくて入手したのだったと思う。その中に、ソ連では多くの人が別荘を持っているという記事があった。別荘は日本では一部のお金持ちが所有するもので、庶民には縁のないものであり、お金持ちでも別荘を所有していない人はたくさんいる。したがって、ソ連では一般労働者であっても、別荘を所有しているということに驚いた。このことを両親に言うと、それはソ連の嘘だろうと言う。両親の世代は、脊髄反射的に共産主義に嫌悪感を抱いている人が多いので、別荘の件をまっこうから否定していた。しかし、別荘は存在し、多くの庶民が所有しているというのは事実だった。この別荘というのがダーチャである。
今では、ダーチャを別荘と翻訳してきたのは誤りだったということが確定している。畑及び畑に付属する小屋がダーチャであり、日本の別荘とはまったく異なる。近頃は、宿泊できたり、中には通年住めるような豪華な建物もあるようだが、多くは農機具の保管や、畑仕事の途中で休憩を取るための小屋である。
主食に近いジャガイモはロシアの生産量の90%、野菜類は80%がダーチャで生産されている。ソ連が崩壊し、市場経済に移行する途中で、ロシアは深刻な経済危機に陥った。これを乗り越えた原動力の一つが、ダーチャが作り出した豊富な食料の存在であった。ダーチャはソ連当局が人民に対し、自給自足を強要したネガティブな側面もあったかと思う。国策であったがために、5割以上の世帯がダーチャを所有するにいたった。生活力旺盛なロシアの庶民はそれを前向きにとらえ、ダーチャを生活の楽しみにまで昇華してしまい、さらには経済危機で生活が苦しいときも乗り切ってしまった。ロシアでは「別荘」は庶民の必需品となっている。日本でも「別荘」を整備したらどうだろうか。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)











最近のコメント